防犯及び安全対策の手引き

令和7年2月3日
令和7年2月
在リトアニア日本国大使館

I はじめに

リトアニアは、1990年に旧ソ連邦からの独立を宣言し、2004年3月にNATO、同年5月にEUに加盟し、2007年12月にシェンゲン協定に参加しました。首都ビリニュスはユネスコ世界遺産(文化遺産)に登録されるなど古い歴史を有する一方、ネリンガ地方(世界遺産:自然遺産)など自然豊かな国としても知られ、観光地としても注目されています。

この手引きは、皆様が安全に生活するための基礎的な情報を提供することを目的として作成しました。この手引きが、皆様の安全対策の一助になれば幸いです。

 

II 防犯の手引き

1 基本的な心構え

リトアニアでの滞在を、安全なものにするため、皆様が常に「自分の身は自分で守る」と言う心構えを持ち、日頃から情報収集に努め、現地情勢、習慣及び国民性を熟知した上で、用心することによりトラブルを回避することが出来ます。

また、気候や環境、医療事情も日本とは大きく異なりますので、健康管理にもご注意ください。

2 リトアニアにおける刑法犯罪罪種別認知件数の推移及び日本人被害事例

リトアニアにおける治安は比較的安定しており、2024年の犯罪発生総件数は47,126件で、前年と比較すると増加(+1,945件)しております。
一方で、外国人被害件数は1,194件で、前年と比較すると、増加(+46件)しております。

 
2023年(件)
2024年(件)
前年比(%)
犯罪発生総件数
45,181
47,126
104
殺  人
73
92
126
傷  害
136
135
99
性犯罪
178
161
90
強  盗
340
336
98
窃  盗
10,820
12,496
115
薬物犯罪
3,921
4,518
115
外国人被害者数 1,148 1,194 104

(出典:リトアニア内務省)


〇 日本人の被害事例と対応策

スリ被害

  • 観光地として知られるシャウレイの十字架の丘において、男1人、女2人のグループに声をかけられ、写真を撮る際、所持していた鞄内から現金を抜き取られた。
  • 路線バスに乗車した際、バス前方にある荷物置場にバッグを置いていたところ、バッグ内から現金を抜き取られた。

※スリの手口として注意を他に向けている間に、現金等を盗むことがあります。荷物からは絶対に目を離さないこと、貴重品は肌身離さず持っておくことが大事です。また、貴重品や身分証明書等は、分散して携帯するようにしましょう。

置き引き被害

ビリニュス市内中心部(駅周辺地区)のレストランで、代金支払い後、財布をテーブル上に置き忘れたまま退店し、置き忘れに気付いてレストランに戻ったが、すでに財布はなかった。

※手荷物を座席に残したまま離席したり、手荷物を椅子の背もたれに掛けたり、床に置くのはできるだけ避け、常に目の届く場所に置くようにしましょう。特に夏場は、オープン・カフェが多くなり置引き被害が増加します。

空き巣被害

ビリニュス市内のマンション居室に何者かが侵入し、屋内から現金等が盗まれた。

※住居を選ぶ際に周辺の治安状況やセキュリティ体制も確認するとともに、外出時には、確実に施錠してください。
 

3 防犯のための具体的注意事項

(1)住居における注意事項

  • 入居の際、新しい鍵に取り替えることをお勧めします。
  • 敷地への出入口(外門)や建物の出入口に施錠設備があり、住民以外の者が自由に出入りできない構造の物件が望ましいです。
  • 一般的に、地上1~2階や最上階は、侵入しやすいため、選択の余地があるのならば避けた方が良いです。バルコニーは侵入口となる場合もあるので、注意してください。
  • 自動車盗難及び車上狙い対策から専用駐車場付きの物件がお勧めです。
  • 警備会社と直結したホーム・セキュリティ・システムを設置することをお勧めします。

(2)外出時の注意

鉄道駅やバスターミナル、夜の繁華街及び市場等の人の集まる場所では貴重品の管理に注意してください。また、夜間の一人歩きは避けてください。

  • 必要以上の多額の現金を持ち歩くことも避けた方が良いです。また、貴重品等は人目に付かないように携行して下さい。
  • リトアニアでは、現金よりもカード支払いが広く普及していることから、カード情報の管理やスキミング防止を徹底してください。
  • 路上における支払いの際は、周囲に不審人物がいないかどうか確認することや、財布を手に持ったままにしないなどの注意が必要です。
  • 悪質な個人タクシーもいますので、タクシーは街路で拾うのではなく、タクシーアプリ(Bolt、Uber等が便利です)やタクシー会社に電話して呼ぶ方が確実で料金も適正です。飲食店やホテルなどでは、従業員に呼んでもらうことも可能です。
  • 自動車盗難や車上狙いを防止する上で、アラーム・システム等の盗難防止装置は必要不可欠です。盗難防止装置は、信用のおける業者を選んで下さい。バイクや自転車には、複数の鍵を掛けましょう。
  • 車内に貴重品や鞄を残して車を離れないよう注意してください。
  • 深夜のバー等で親しげに近づき、飲み物に睡眠薬を入れて意識を失わせて金品を奪う昏睡強盗や強姦も発生しています。バーやナイトクラブ等で近づいてくる人物には注意してください。
  • また、最近は、薬物事案が増加しており、夜の飲食店やオンライン上での取引が盛んに行われており、当局による取締りも強化されております。不用意に見知らぬ人と親しくなる、連絡先を交換する、怪しいサイト(SNS)を閲覧・利用しないなどして、不測の事態に巻き込まれなように注意してください。
  • 飲酒に絡む各種事案(殺人、強盗、傷害、窃盗、薬物、交通事故、ぼったくり、各種トラブル)が多発しており、羽目を外すことなく、適度な飲酒を心掛けてください。


4 交通事情及び交通事故対策

(1)交通事情

  • リトアニアの車両は左ハンドルの右側通行です。また、バス、トローリーバスは道路交通上優先されます。
  • 車道に「A」の文字が記載されたレーンは、バス・トローリーバス優先レーンですので一般車両の通行は禁止されています。
  • リトアニアでは24時間、ヘッドライト点灯が義務付けられています。
  • 道路の舗装状況は悪く、車道と歩道とを問わず陥没している箇所が多く、マンホールの蓋が破損したりすることも希にあります。
  • 道路交通標識及び標示が不整備で、一方通行も多く、またラウンドアバウト(環状交差点)があるなど交通環境は複雑です。
  • 市内では車道上に駐車帯を設定しており、路上における違法駐車も多く、交互通行が必要な箇所があります。
  • 冬季(11月1日~4月1日)は、スタッドレスタイヤ等への交換が義務づけられています。
  • 信号機のない横断歩道では、歩行者が優先ですので、歩行者がある場合は、必ず一時停止してください。

(2)交通事故対策

  • リトアニアにおける2024年の交通死亡事故者数は123人で、2007年の739人をピークに、減少傾向にあります。
  • 信号機やガードレールなどの安全設備は、日本と比べると不十分であり、夜間は照明設備が少ないため、車両から歩行者の見通しが悪くなっています。
  • 歩行の際は、必ず歩道を歩き、道路横断の際は横断歩道を利用してください。また、夜間は反射材をつけるようにしてください(市内のスーパー、雑貨店等で購入可能)。
  • 交通事故を起こした際は、現場を離れることなく、人命救助措置を講じた上で、必ず警察に通報し、所要の手続きを経て下さい。

5 テロ・誘拐対策

(1)概要

現在のところ、リトアニアにおいてテロ組織の活動は確認されておりません。しかし、リトアニアのテロ警戒レベルは、2015年2月から、仏テロ事件を受けて5段階の内で最も低いレベルとされていた「最低」から「低」に引き上げられ、警察官によるパトロールの強化が図られるなど、テロに対する警戒が高められています。また、2019年には、市街地で爆発物が放置される事案も発生しています。リトアニアはEU加盟国であり、EU各国の情勢や隣国情勢を受けて治安情勢が変化しますので、常に各国の最新情報に十分注意する必要があります。

(2)日本人に対する脅威

  • リトアニアにおいて、現在のところ、日本人や日本企業がテロ、誘拐等の標的になる具体的な脅威は確認されておりません。しかし、テロは、日本人が数多く渡航する欧米やアジアをはじめとする世界中で発生しており、これまでもチュニジア、ベルギー、バングラデシュ、スリランカ等においてテロによる日本人の被害が確認されています。
  • 近年では、単独犯や一般市民が多く集まる公共交通機関等を標的としたテロが頻発するなど、日本人も被害者となり得ることを十分に認識し、海外安全ホームページや報道等により最新の治安情報の入手に努め、日頃から用心や警戒を怠らないことが大切です。

(3)デモ・集会に関する注意喚起

デモ・集会は、国内外の情勢に応じ、市街地でも散発的に行われています。トラブル防止の観点から、興味本位で不用意にデモ・集会に近づくことは避け、遭遇した場合は、速やかにその場を離れるなど、無用のトラブルに巻き込まれないようにしてください。

6 病院及び滞在許可に関する連絡先

(1)総合救助センター(エマージェンシー・レスポンス・センター)

  警察・消防・救急車(24時間対応、英語可)
  112をダイヤルして下さい。リトアニア国内共通です。

(2)診療施設(日本人がよく行くプライベートクリニックで、英語による受診が可能です)

   ア Hila
     所在地:V.Grybo g.32A, LT-10318, Vilnius
     携帯:+370(または0) 698 00000
     URL:https://www.hila.lt 

   イ Baltic-American Clinic
     所在地:Nemencines pl.54a, LT-10103, Vilnius
     電話:+370(または0)(5) 234 2020
     携帯:+370(または0)698 52655 、+370(または0)682 14000
     URL:https://bak.lt 

   ウ Kardiolita
     所在地:Laisves pr.64a, LT-05263, Vilnius
     携帯:+370(または0)620 33383
     URL:https://www.kardiolitosklinikos.lt  
     ※カウナス、クライペダ、シャウレイ、ウテナにも系列クリニックが所在しております。(電話番号は共通) 

   エ Northway medicinos centrai (Northway Health Centre)
     所在地:S. Zukausko g.19, LT-08234, Vilnius
     携帯:+370(または0)633 30303
     URL:https://nmc.lt/ 
     ※カウナス、クライペダ、クレティンガにも系列クリニックが所在しております。(電話番号は共通)

   オ Tavo klinika
     所在地:Polocko g. 17-201, LT-01205, Vilnius
     携帯:+370(または0)601 22649、+370(または0)684 40839
     URL:https://www.tavoklinika.lt/en/home/ 


(3)リトアニア滞在に関する照会先

リトアニアにおける3か月以上の長期滞在許可に関するご質問については、移民局(Migracijos departamentas)までお問い合わせ下さい。

ア ビリニュス移民局事務所
  所在地:Vytenio g. 18, LT-03229, Vilnius
  電話:+370(または0)707 67000(海外からは+370 5 271 7112)

イ カウナス移民局事務所
  所在地:A.Juozapaviciaus pr. 57, LT-45262, Kaunas
  電話:+370(または0)707 67000(海外からは+370 5 271 7112)

ウ クライペダ移民局事務所
  所在地:Kauno g. 6, LT-91154, Klaipeda
  電話:+370(または0)707 67000(海外からは+370 5 271 7112)

※その他の都市の事務所については、https://www.migracija.lt(移民局のホームページ)
から参照可能です。
 

(4)リトアニア国内における一般的な電話のかけ方

ア 固定電話にかける場合は、最初に0をダイヤルし、その後に市外局番、固定電話番号の順にダイヤルします。市内通話の場合は、固定電話番号のみのダイヤルでかけることができます。
【例】ビリニュス以外の都市から当館に電話をかける場合
 0-(市外局番)-(固定電話番号)
 0-(  5  )-(2310462)

イ 携帯電話にかける場合は、最初に0をダイヤルし、その後に携帯電話番号の順にダイヤルします。
【例】当館の緊急電話に電話をかける場合
 0-(携帯電話番号)
 0-(66216650)     

※海外から携帯電話をリトアニアに持ち込み、ローミング等を行い電話をかける場合
 リトアニアの国番号+370をダイヤルし、固定電話にかける場合は、市外局番、固定電話番号の順に、携帯電話にかける場合は、携帯電話番号の順にダイヤルします。

(5)簡単な緊急時のリトアニア語表現

助けて!
Gelbekite ! (ゲルベキテ)

警察
Policija (ポリツィヤ)

警察を呼んで下さい
Pakvieskite policija. (パクヴィエスキテ ポリツィヤ)

泥棒!
Vagis ! (ヴァギス)

盗難に遭いました
Mane apvoge. (マネ アプヴォゲ)

病院
Ligonine (リゴニネ)

救急車を呼んで下さい
Pakvieskite greitaja pagalba. (パクヴィエスキテ グレイタヤ パガルバ)

気分が悪いのです
Aš blogai jauciuosi. (アシュ ブロゲィ ヤウチュオシ)

英語を話せる人はいますか?
Ar cia kas nors kalba angliškai ? (アル チャ カス ノルス カルバ アングリシュカイ)

火事だ!
Gaisras ! (ガイスラス)

III 緊急時に備えて

1 平素の準備と心構え

日頃から自分の所在(在留)を周囲の人に知らせておくとともに非常用物資を準備しておくことが重要です。

(1)在留状況の届出(在留届)

海外に引き続き3か月以上滞在する方は、旅券法の規定により、在外公館に在留届をご提出いただく義務があります。
緊急事態が発生した場合、在留届に基づき、在外公館から安否や所在確認等を行うこととなります。在留届は、インターネットで提出できます。(http://www.ezairyu.mofa.go.jp/RRnet/index.html
住所や連絡先が変更になった場合も、速やかに届出てください。

(2)避難場所の確認

緊急事態に応じた避難場所(大使館、ホテル等)を検討し、場所を覚えておきましょう。

(3)非常用物資の準備

旅券、現金及び貴重品等で緊急時に必要となるものは、すぐに持ち出せるよう予め保管しておくことが大切です。また、非常用物資として、食料や飲料水及び医薬品等を備えておきましょう。2週間分が一般的な備蓄の目安です。
後述の「3 緊急事態に備えてのチェックリスト」をご参照下さい。

 

2 緊急時の行動

基本的には、現地当局の指示に従って行動してください。平静さを失わず、事態の把握及び情報の入手に努めることが重要です。

(1)大使館との連絡等

緊急事態が発生した際には、当館からも情報提供に努めますが、皆様からも、ご自身・ご家族の安全や知り得た情報について、当館に連絡して下さい。皆様の安全が確認できるとともに、他の日本人への有益な情報となります。

(2)国外への退避
 
各自の判断により自発的に国外へ退避する場合は、その旨を当館へご連絡ください(代表メールへの連絡も可能です)。また、「退避勧告」が発出された場合、一般商用便が運行されている間は、同便を利用して可能な限り、早急に国外へ退避してください。

(3)緊急連絡・避難先

在リトアニア日本大使館(Japonijos ambasada Lietuvoje)
所在地:M.K. Ciurlionio g. 82b, LT-03100, Vilnius
電話:+370(または0)(5) 231 0462
FAX:
+370(または0)(5) 231 0461

3 緊急事態に備えてのチェックリスト

(1)旅券

6か月以上の残存有効期間があることを確認しておいて下さい(旅券の切替発給の申請は残存有効期間1年未満の場合に可能です)。また、旅券の最終頁の「所持人記載欄」も記載するようにしましょう。特に、下段に「血液型(blood type):○型」と記入しておくことをお奨めします。リトアニアにおける滞在許可証等をお持ちの場合、いつでも持ち出せる状態にしてください。

(2)現金等

ご家族が約10日間生活できる位の額(外貨及び現地通貨)を予め用意しておくことをお奨めします。ただし、リトアニアは1万ユーロ(及び同相当額を超える外貨)を超える現金の持込み及び持出しに際して申告が必要なので、ご注意下さい。また、クレジット・カードの有効期限等についてもご確認ください。

(3)自動車等の整備
整備状態と十分な燃料にご留意下さい。また、車内には、懐中電灯や地図、ティッシュ等を準備しておくと便利です。
 

(4)携行品の準備

  • 避難場所への移動を必要とする事態が発生した場合、衣類・着替え等も必要となります。準備しておく場合、長袖・長ズボンをお勧めします。また、冬季においては、防寒性(上着や厚手の靴下等)にも十分ご配意下さい。
  • 履物は、慣れた靴で、行動に便利で靴底の厚い頑丈なものが望ましいです。
  • 洗面用具として、タオル及び歯磨きセット,石鹸等があれば便利です。
  • しばらく自宅待機する場合も想定し、米及び調味料、缶詰類、インスタント食品、粉ミルク等の保存食、ミネラルウォーターなど、ご家族が約10日間生活できる程度の量を準備しておくことが望ましいです。
  • 医薬品の準備として、常用薬、外傷薬、消毒用石鹸、衛生綿、包帯、絆創膏などがあります。
  • ビリニュス市内では、BBC(FM95.5)の放送を聞くことが可能です。また,NHKワールド・ラジオ日本につきましては、以下のURLを参照して下さい。http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/ja/radio/

(5)その他

携帯電話の充電器(コード)、懐中電灯、予備バッテリー、ライター、ローソク、マッチ、ナイフ、缶切り、栓抜き、紙製の食器、割り箸、固形燃料、簡単な炊事用具などが考えられます。

4 その他参考


当館では、以下のとおり防災マニュアルを作成しておりますので、万が一に備え、参考にしてください。

(1)自然災害対策
https://www.lt.emb-japan.go.jp/files/100572663.pdf
 
(2)原子力災害対策
https://www.lt.emb-japan.go.jp/files/100592380.pdf
 

IV 終わりに

事件や事故は、誰の身にも起こり得るものです。外国で遭遇すると、負担はより大きいものになります。まずは事件などに巻き込まれないよう最大限の注意を払う必要があります。

快適な滞在は安全の上に成り立つことを、ご理解いただき、「万が一」に備えた防犯対策、安全対策に取り組んでいただければ幸いです。