天皇陛下御誕生日に際してのご挨拶

令和4年2月23日
駐リトアニア日本国大使 尾﨑哲
日本国天皇陛下の御誕生日に際し、新型コロナウィルス感染予防のため祝賀レセプションが開催できないことに代えて、書面にてご挨拶申し上げます。
 
天皇陛下は2月23日で62歳になられました。2019年5月に第126代目の天皇陛下にご即位されてから早3年目となられます。陛下におかれては、元旦に発表された新年挨拶のビデオメッセージで、引き続き日本国内や世界で多くの人々が困難な状況に直面していることに心を寄せられつつ、人と人のつながりを一層大切にしながら、痛みを分かち合い、支え合って乗り越えていくことを心から祈っていると述べられました。陛下のお気持ちにお応えしつつ、皆様と共に、明るい希望と夢を持って進むことができるよい年にしたいと心から願っています。
世界は現在、安全保障上の観点からも、経済・エネルギー上の観点からも、歴史的なチャレンジに直面しています。リトアニアは、その最前線において立ち上がり、普遍的価値観を共有する国々との連帯を呼びかけ、自らも危機を乗り越えるべく大胆かつ果敢な行動に速やかに打って出でいます。このような中、先日2月16日の「リトアニア国家回復の日」の式典の前日に行われたナウセーダ大統領と各国大使との懇談会でも、大統領より「今後アジア・パシフィックの国々との絆をより深める中で、日本とは今後とも政治的にも経済的にも文化的にも最良のパートナーでありたい」とのメッセージをいただきました。このお言葉を実践すべく、私自身全力を尽くして参ります。
 
振り返ると2021年は、2020年に引き続き、世界的に新型コロナウィルスとの戦いに明け暮れた一年でありました。日本にとって2021年は、東日本大震災の発生から10年目の節目であり、また、右震災からの復興を象徴する「東京オリンピック・パラリンピック2020」が、コロナウィルス対応との両立という、歴史上前例のない困難な状況下で開催された年でもありました。オリンピックでは、感染予防のため人の往来が制限されたことは残念でしたが、困難な状況にも拘わらず、リトアニアから42名のアスリートが参加した他、合計205の国・地域から1万1千人以上のアスリートの参加を得、皆が一致団結した平和の祭典を成功裡に開催することができました。関係者の皆様には改めて御礼申し上げます。
 
日本とリトアニアとの二国間の交流においても、制約が多い状況は同じでしたが、そのような中でも外交、経済、文化の様々な分野において、関係強化を図ることができました。外交面では、昨年7月、茂木俊充外務大臣が、日本の外務大臣としては15年ぶりにリトアニアを訪問しました。茂木大臣はシモニーテ首相やランズベルギス外相等の政府要人と意見交換を行い、両国の歴史的絆や同じ基本的価値観を共有するパートナーであることを再確認しつつ、経済関係をはじめ更に二国間関係を発展させていくことを合意しました。また、自由で開かれたインド太平洋の実現のため、同地域における同士国との結束を重視すること、また、バルト三国の欧州統合化に役立つ広域インフラ事業に協力していくこと等が確認されました。日本大使館として、これらの合意事項の具体化のため、フォローアップして参ります。
 
経済関係については、昨年9月に、前述の茂木外務大臣のリトアニア訪問の成果をフォローアップする形で、経済産業省を団長とする「クライペダ港湾官民合同視察ミッション」の官民の(16組織)25名がリトアニアを訪問し、クレイヴィース・エネルギー大臣やスクオディス運輸通信大臣とエネルギー案件やレールバルティカといったリトアニア政府が重視する大型インフラ・プロジェクトへの日本の協力の可能性につき意見交換を行いました。今後とも事業の具体化のため、リトアニア政府と一体となって協力の可能性を追求し、日本とリトアニアとの経済関係の強化に努めて参ります。
最後に新型コロナウィルスの影響を一番受けたのが、人と人の交流を基本とする文化交流でしたが、感染予防策に万全を期しつつ、「杉原千畝記念リトアニア・日本友好オンラインコンサート」や、ナウセーダ大統領夫人、カイリース文化大臣などにも審査員として参加いただいた「桜写真コンテスト」など多くの文化行事の実施ができました。元外交官の杉原千畝氏が発給した命のビザ80周年を記念した「杉原千畝イヤー2020」で培った二国間の既存の友好関係や歴史的絆がより一層深まった年になったと実感しております。2022年も友好100周年という節目ということもあり、両国の文化交流のさらなる発展を促進するために努めて参ります。
 
本年は、日本とリトアニアの友好100周年の記念すべき年です。1922年12月20日、日本はリトアニアを法律上の政府として承認し、以来、両国は良好な関係を育んできました。本年は、新型コロナウィルスの状況が許す限り、友好100周年をお祝いするいろいろなイベントを実施していきたいと計画しています。詳しくは、日本大使館HPやFBにイベント情報を随時掲載していく予定です。また、本年はカウナス欧州文化首都の年であり、来年はビリニュス建設700周年の節目でもあります。この機会を利用して、大いに二国関係を盛り上げたいと思っています。
 
リトアニアでは百年以上成長し、強い耐久性を有するOAKの木が人々に広く愛されており、その強さを表す例えとして「stiprus kaip šimtametis ąžuolas」(百年成長したOAKのように強いの意)とよく表現されると聞きました。私は、2022年を、新たな100年の日本とリトアニアの友好関係のスタートとして、両国の絆の強さの象徴であるOAK の木をリトアニアの皆さんと共に育んで行きたいと願っています。大使館員一同、しっかりと取り組んで行きたいと思いますので、ご支援、ご協力を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
 

2022年2月23日

 
在リトアニア日本国特命全権大使
尾﨑 哲