「交通事故大国」リトアニアの挑戦
リトアニア統計局のデータでは、2007年中、リトアニアの交通事故死者数は739人でした。この数字は、人口10万人当たり20人強が交通事故で死亡していることを意味し、日本(2007年中の交通事故死者数5,744人、人口10万人当たり死者数4.5人)の約4.5倍に相当します。
2004年のEU加盟以降、リトアニアの年間交通事故死者数が700人を下回ったことはなく、残念なことですが、リトアニアはヨーロッパ有数の「交通事故大国」と言えます。
これに対し、リトアニア政府も交通事故対策に本腰を入れ始めました。
第一に、信号機の増設及び更新など交通安全施設を拡充しています。また、これに併せて、首都ビリニュスでは信号機管理システムを導入して渋滞解消を図る整備事業を進めています。
第二に、交通違反に対する取締り強化を進めています。特に重視されているのが、飲酒運転と速度違反に対する取締りです。
飲酒運転対策については、飲酒運転で検挙された違反者の氏名公表が試行されました。氏名が公表されることで、飲酒運転で検挙されると、罰則が科せられるだけでなく、社会的信用も失いかねないことを知らしめ、飲酒運転を自制させる試みです。
また、自動速度違反取締装置(いわゆる「オービス(ORBIS)」)も急ピッチで設置が進められています。報道によると、オービスが設置された地点での交通事故は大きく減少しており、交通事故対策に有効であるとのことです。
第三に、交通安全に対する啓発に力を入れています。人々の交通安全意識を高め、ドライバーの運転マナーを向上させることは、洋の東西を問わず、事故防止上不可欠なことと言えましょう。最近は、飲酒運転に警鐘を鳴らしたり、シートベルトの着用を勧めるテレビCMをよく見るようになりました。EU諸国もリトアニアの取組みに関心を示し、有形無形の支援を行っているようです。
これらの対策の結果、2008年の交通死亡事故は、減少傾向(昨年1~8月の死者:475人→今年:295人で約38%減少)にあるとのことです。交通事故抑止に取り組むリトアニアの挑戦は、始まったばかりで、今後も紆余曲折があるかとは思いますが、過去10年で交通事故死者数を大きく減少させた我が国(平成9年:9,640人→平成19年:5,744人で約40%減少)と同様に、リトアニアの交通事故対策が更に進められることを期待します。

写真①:増設の進む信号機(Lietuvos rytas紙5月8日掲載記事から)

写真②:新型オービス(Lietuvos rytas紙7月24日掲載記事から)
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